手形と小切手の裏書譲渡とは権利ごと譲り渡すこと 手形や小切手は渡すことができる

手形と小切手の裏書譲渡とは?わかりやすく完全解説 手形

手形や小切手は裏面に渡す相手の名前を書くことで、お金を受け取る権利ごと譲り渡すことができます。これを「裏書譲渡」といいます。

手形と小切手はどちらも「有価証券」です。有価証券とは、財産的価値のある権利を表している証券のことです。権利の発生や移転、行使の全部もしくは一部が証券によってなされるモノを「有価証券」といいます。

簡単にかみ砕いて説明すると、手形や小切手を持っていると、その書面に書かれている金額を後日受け取れる「権利」が発生するのです。小切手と手形ではお金を手に入れれられるタイミングは異なりますが、その証券を持っているだけでお金を受け取ることが可能なのです。

手形と小切手の特徴とそれぞれの違い

手形と小切手の特徴とそれぞれの違い
手形も小切手も「有価証券」です。お金を受け取れる権利が有価証券の目的ですから、基本的な性質は同じです。ではなにが違うのか?それぞれの違いは「お金を手に入れられるまでの時間」が異なります。

小切手や手形の特徴、それぞれの違いについてもう少し詳しく、わかりやすく解説していきます。

手形の特徴

ビジネスで利用される手形は大きく分けて「為替手形」と「約束手形」の2種類に分類されます。

為替手形は基本的に輸出入業で使われることが多いです。日本国内の決済手段としてはほとんど使われないため、平成28年度の商工会議所主催の簿記検定において「2級および3級について手形取引は約束手形のみとなり、為替手形の取引は出題されません。」と明記されました。

現在の日本経済において手形と呼ばれているものは、すべて「約束手形」になります。約束手形とは、手形を発行した人が手形を受け取る人に対して、決められた期日に代金を支払うという約束を表す有価証券です。取引発生から2ヶ月~3ヶ月後の支払約束になる場合に利用されています。

 

A社長
手形=約束手形と覚えておけばいいんですね。

B社長
例外もあるが、基本的にはそうだな。

 

手形の使用目的は、先ほど述べた後日払いの約束代わりとしての「商業手形」という使われ方が一般的です。経費に計上する際には「受取手形」や「支払手形」というような勘定科目になります。

商業取引以外の使用目的は「手形貸付」と「融通手形」の2つがあります。

手形貸付とは、お金を借りる際に借用書の代わりに約束手形を使う目的で利用されます。お金を貸してくれる人や銀行に対して、お金を借りる企業が約束手形を渡してお金を借りるのです。手形の支払期日に支払いができない場合「不渡り企業」という扱いになってしまいます。

不渡りを6ヶ月以内に2回発生させてしまうと「銀行取引停止処分」となり、銀行と取引ができなくなります。銀行との取引が解消されることで、倒産する可能性がかなり高くなるのです。

融通手形とは約束手形の発行や手形の裏書人となる目的で使われます。取引先である「中小企業の資金繰り改善のため」に裏書譲渡を行ない、手形割引という資金調達方法を取らせるために使われています。

しかし譲渡先と発行元に直接的な商取引のやりとりがないこともあり、手形の支払いが拒絶されるなどトラブルが多いのも事実です。

小切手の特徴

小切手とは、取引のある銀行が小切手を持っている人(または小切手の宛名に名前が書いてある人)に対して「小切手を持っている人の口座から券に書かれている金額支払いを委託するため」の有価証券です。

要は、この小切手に名前が書かれている人に対して、自分の代わりに自分の銀行口座からお金を渡してくださいという委託書類の代わりに使われるのです。小切手を使用する場合、一部の個人事業主や法人格が開設できる「当座預金口座」が無ければ小切手の取引ができません。

小切手には全部で3種類があり、お金を引き出す際に必要なモノがそれぞれ異なります。

小切手の種類と現金引出しに必要なモノ
  • 事業用小切手…「金額の記載と届け出印」
  • 個人小切手…「金額の記載とサイン」
  • 自己宛小切手「チェックライターによる金額刻印と発行店印」

チェックライターとは小切手以外でも手形などの有価証券において、券に書かれている金額の改ざん防止のために使われている刻印専用の機械のことを指します。特殊な書体と、印地面に凹凸が刻まれます。

小切手の基本的な利用目的は「他人への支払い」に使われることですが、自己宛小切手に関しては目的そのものが異なります。小切手を利用する際、当座預金口座が必要です。しかし自己宛小切手の場合は、当座預金口座の開設が必要ありません。

自己宛小切手は「預金小切手」ともいわれています。支払銀行が発行人になっている小切手です。自己宛小切手発行前に現金を銀行に預け、自己宛小切手を作ってもらうことで、当座預金口座をもっていなくても小切手決済ができるようにするためのモノです。

個人用のキャッシュカードや預金通帳に近い使い方をします。当座預金口座を持っていれば特段覚えておく必要はありませんが、小切手の種類の1つとして覚えておいてもよいでしょう。

 

A社長
当座預金口座って法人しか作れないんですか?

B社長
一昔前は比較的に楽に作れたそうだが、今は審査が厳しいという話を聞く。正直、個人事業主であれば必要ないと思うぞ。

 

手形と小切手の違い

手形と小切手の最大の違いは「券に書かれている金額を受け取れるまでの期間」です。手形は記載されている期日にならないと券に書かれている金額を受け取れません。対して小切手は、券を受け取って対象の銀行へ持っていけばお金が受け取れます。

資金繰りが厳しい企業であれば、手形ではなく小切手の方が早くお金を受け取れるということです。「即お金を手に入れられる」という部分では小切手の方が優れています。しかし小切手を扱っている企業自体が少ないというデメリットもあります。

小切手よりも手形取引や掛取引の方が実際に多いです。ただ、手形取引や掛取引の場合は、現金を入手するために支払期日まで待たなくてはなりません。その待ち時間が中小企業の資金繰りを悪化させているという現状もあります。

そこで利用されているのが、手形や小切手の「裏書譲渡」なのです。

手形と小切手の裏書譲渡とは?

手形と小切手の裏書譲渡とは?
手形と小切手の裏書譲渡とは、代金を支払う代わりに手形や小切手を相手に渡すことです。お札や硬貨など多くの人が手にする「現金取引」でたとえてみましょう。

スーパーで買い物をして10,000円札を支払ました。その10,000円はスーパーの仕入で使います。仕入業者が受け取った10,000円札は、従業員の給料として使いました。この時点で「スーパーの買い物客」と「スーパー」そして「仕入業者」と「仕入業者の従業員」という4人が現金を手にしたことになります。

この10,000円を手形や小切手に置き換えてください。10,000円分の小切手や手形を、現金と同じように使うためにも「裏書」が必要なのです。現金取引の場合、取引相手に元々持っていた人の名前を書くことはありません。手形や小切手は受取人と譲渡人両方の名前を裏面に記載することで、現金と同じように使えるのです。

もちろんスーパーのような所で使うことはありませんが、企業同士の商取引の場では手形や小切手の裏書譲渡による取引が一般的なのです。

手形の裏書譲渡の方法

手形を他社に譲渡する場合、裏面にある譲渡記載欄に「渡す人(譲渡人)」と「受け取る人(被裏書人)」の名前などを記載してから渡します。

裏書譲渡の際に記載する内容は次の3つです。

手形裏面の譲渡記録欄
  • 譲渡した日付
  • 裏書人(譲渡人)の住所・社名・代表者名・押印
  • 被裏書人(受け取る人)の氏名

上記の3つを1セットとして、5セットほど書き込めるスペースがあります。裏書の注意点は「単なる記録」ではないという点です。裏書人(譲渡人)は最初の譲渡先だけではなく、最後の手形所持人に対する支払義務を持っています。

小切手を裏書譲渡する方法

小切手は裏面に手形のような譲渡記録欄がありません。そのため、譲渡記録は手書きで記載しなくてはならないのです。ちなみに、小切手の裏書譲渡を行なう際、裏面に「裏書禁止」と記載や刻印がある場合は裏書譲渡ができません。

記載する内容は小切手の方式によって異なります。事業用小切手などの種類とは別に、振出しを行なうための方式にも種類があります。一般的な振出し方法は「持参人払出小切手方式」と「記名式または指図式小切手」の2つです。

持参人払出小切手方式

持参人払出小切手は現金と同じように譲渡する方式で、小切手をお金に換える際に、指定された金融機関に持って行くことで支払いを受けられる小切手のことです。

この持参人払出小切手の裏書方法は、裏面の適当な箇所に「裏書人の記名」と「裏書人の捺印」があればOKです。裏書の文言や被裏書人の名前を書く必要はありません。本来であれば住所も書く必要はありませんが、小切手が不渡りになった場合の処理が容易になるため、住所も記載するのが一般的です。

記名式または指図式小切手方式

記名式または指図式小切手とは、手形の裏書譲渡と同じように、裏書人の名前や住所、社名と被裏書人の名前の記入と押印が必要です。たとえばA社長がB社長へ振り出した記名式小切手の場合、A社長とB社長の両名の名前などが書かれていなければ請求ができないのです。

裏書譲渡された手形と小切手の効力

受け取った手形や小切手には「権利移転的効力」と「資格授与的効力」という2つの効力があります。

権利移転的効力とは、受け取った手形や小切手をさらに他の人に譲渡できる効力のことです。裏書のスペースに5セットほど書き込めるスペースがあるのは、この効力を有効にするためです。裏書譲渡されたA社長がB社長に手形や小切手を渡し、その手形や小切手をさらにB社長がC社長に渡した場合は、それぞれの連続した記録がされていなければなりません。

資格授与的効力とは、裏書が連続して記載している場合に発揮されます。最後の被裏書人は約束手形や小切手を示すだけでお金を受け取る権利が主張できます。要は見ず知らずの相手が自分の発行した手形や小切手を持っていれば、知らない相手であっても支払いをしなければならないという効力が発揮されるのです。

連続した記録がされていない場合は効力が発揮されず、最後に手形や小切手を受け取った被裏書人が支払いを受け取る権利があると主張しても、その代金を受け取れません。

この2つの効力が発揮されることで、スムーズな商取引が可能なのです。

 

A社長
裏書譲渡って、ただ裏面に名前を書いて渡すだけでは効力を発揮しないんですね。

B社長
正しい方法で運用しなければ、譲渡された手形や小切手を決済に使う人が困ってしまうのだ。

 

手形と小切手の裏書譲渡で覚えておくべきメリットとデメリット

手形と小切手の裏書譲渡で覚えておくべきメリットとデメリット
手形と小切手の裏書譲渡では覚えておくべきメリットとデメリットが存在します。

手形と小切手の裏書譲渡のメリット

手形と小切手の裏書譲渡には次のようなメリットがあります。

メリット
  • 共通:手元にお金が無くても決済手段として利用できる
  • 手形:手形割引などの支払期日前の資金調達が可能になる
  • 小切手:即時現金を手に入れられる

手形と小切手の裏書をするだけで、現金と同じような決済手段として利用できます。手元にお金が無い状態でも決済に利用できるため、資金が枯渇している状態だとしても、裏書ができることで、現金の代わりに経費などの支払いが可能です。

本来、手形は支払期日にならないとお金を受け取れません。支払期日前に裏書譲渡された手形を持っていれば、その手形を担保にした融資が受けられるのです。この融資サービスを「手形割引」といいます。

小切手は振出しを行なった日から、小切手に記載されている期日までの期間中に銀行から小切手に記載された現金を受け取れます。そのまま裏書譲渡をして決済に利用しても構いませんが、銀行にもって行くことで即時現金を得られるのもメリットです。

手形と小切手の裏書譲渡のデメリット

手形と小切手の裏書譲渡のデメリットは「不渡りになった場合に遡及請求される」ことです。

遡及請求とは、裏書された記録を辿って、銀行から請求されることをいいます。本来、手形や小切手は不渡りになることがありません。というのも、手形や小切手は振出しを行なった最初の企業の信頼で利用できるものだからです。

また、不渡りを2回起こした場合は、銀行取引停止処分になってしまい、高い確率で倒産してしまうことも不渡りが起こりにくい理由です。

つまり、不渡りになるような企業は手形や小切手の最初の振出人にはなれないのです。しかし万が一、不渡りを出してしまった場合、銀行から最後の譲渡人(渡した人)に対して不渡り金の弁済を求められます。

弁済した企業は、自分に譲り渡した譲渡人に対して弁済金を求めます。流れを見ると

「最初の譲渡人(A社長)→被譲渡人(B社長)譲渡人→被譲渡人(C社長)譲渡人→銀行」

このような手形や小切手の流れができます。そのうえで、不渡りが発生した時点での遡及請求は

「銀行→被譲渡人(C社長)譲渡人→被譲渡人(B社長)譲渡人→被譲渡人(A社長)最初の譲渡人」

この流れで請求されるのです。最初の振出人に支払能力があれば、裏書譲渡を活用して決済を行なっても問題ありません。しかし支払能力が怪しい状態で裏書譲渡による決済をした場合、不渡りになるリスクが高くなり、決済用の有価証券として意味を持たなくなってしまうのです。

手形と小切手の裏書譲渡を理解して効率的な取引をしよう

手形と小切手の裏書譲渡を理解して効率的な取引をしよう
手形と小切手の裏書譲渡は、事業用の決済などに利用できる便利な有価証券です。裏書譲渡のルールやメリットデメリットをきちんと理解すれば、効率的な商取引が可能になります。裏書譲渡をされてからでも遅くありません。

手形は手形割引、小切手は即時現金引出しで資金調達ができて、両方とも裏書譲渡による決済が可能です。メリットやデメリットを特徴に合わせて理解しておくことで、効率的に運用できます。

わからないことをそのままにしておかず、自分の金融知識という財産にして活用してください。

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