売掛金と未収金は似たイメージがあるためか、頭の中でゴチャゴチャになっている方も少なくありません。しかし売掛金と未収金はまったくの別物です。
売掛金と未収金のことを理解しないままにしておくと、決算書評価が落ちてしまい、後で痛い目を見ることも。特に注意すべきはその計上方法です。計上方法の違いを理解しないまま、間違って経費計上してしまうと、お金を借りたいのに融資を受けられなくなってしまうことがあるのです。
- 売掛金は事業と関係のある商品を販売したときに計上できる
- 未収金は事業と関係ない商品を販売したときに計上できる
将来的に利用するかもしれない融資審査で通しやすくするためにも、売掛金と未収金の違いを把握しておくことが重要でしょう。
目次
売掛金と未収金の違い 事業との関係性がポイント
売掛金と未収金はどちらも、相手に何かを販売したのに「まだお金を貰っていない状態」のことです。お金を貰っていないという事実はどちらも同じなのですが、それぞれの言葉は違う意味をもちます。
売掛金と未収金で大きく違うのは「相手に販売したものが何なのか」という点です。「何を販売して生じた未回収のお金なのか」というところが注目ポイントです。
売掛金 | 未収金 |
---|---|
事業に関係がある | 事業に関係がない |
表にあるように、「事業に関係のあるかどうか」が焦点となります。
以下でも説明をしますが、例えて言うならハンバーガー屋の場合。ハンバーガーを売ったら商品代金がもらえますよね。でもまだ貰えていない。この貰えていない商品代金のことを「売掛金」と言います。
一方、このハンバーガー屋が建物を持っていたとします。それを誰かに貸したとします。建物を貸したので賃料が入ってきます。でもまだ貰えていない。この貰えていない賃料のことを「未収金」と言います。
ハンバーガー屋が取り扱うメインの商品はハンバーガーです。メインの収入もハンバーガーを売って入ってきます。賃料ではありません。
この違いがあるのです。
売掛金の定義 事業に関係のある売上のこと
売掛金とは簡単に言うと「後からお金を貰える状態のこと」です。相手に商品は提供したけれど、商品代金はまだ貰っていない。だから商品代金をもらう権利があるという状態ということです。




売掛金とは、後で代金を請求できる権利のことを指します。これを前提として、何か商品を販売しているから請求できるものです。売掛金として帳簿をつけられるのは、事業に関係のある商品を提供したときだけです。
参照 売掛金とは?
事業とは関係のない商品。例えばハンバーガーチェーン店が古いハンバーガーを作る機械を売却したときに得た収益の場合は、この後に説明する「未収金」として扱われます。






未収金の定義 事業に関係のない売上のこと
未収金も売掛金と同じで「後からお金を貰える状態のこと」です。
商品やサービスを販売した相手からお金をまだ貰っていない状態というのは売掛金と同じですが、渡した商品の分類が売掛金とは違う計上方法になります。


売掛金と未収金 それぞれの違い(考え方、仕訳)
売掛金と未収金の違いを表で比較しました。もう一度確認しておきましょう。
まず前提としてどちらにも共通することは「商品やサービスを販売・提供したが、まだお金がもらえていない状態。そして後からもらえる状態である。」ということです。
売掛金 | 未収金 |
---|---|
事業に関係がある | 事業に関係がない |
売掛金も未収金も、相手に商品は販売したのにまだお金を貰っていない状態を表します。このとき、どのような商品を提供するのかによって売掛金か未収金かが変わるので注意してください。事業に関係のある商品なら売掛金、関係ない商品なら未収金です。
売掛金の仕訳例
実際に帳簿へ記載するときの記載方法を仕訳例で示していますので参考にしてください。ちなみに借方と貸方とは帳簿に書くときに左側に書くのが借方で右側に書くのが貸方です。借方で「お金の動き」をあらわし、貸方で「財布の中身の変化」をあらわすと覚えて起きましょう。
10,000円の商品を売ったとき
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000円 | 売上高 | 10,000円 |
10,000円が入金されたとき
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 10,000円 | 売掛金 | 10,000円 |
〈未収金の仕訳例〉
10,000円の商品を売ったとき
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収金 | 10,000円 | 雑収入 | 10,000円 |
10,000円が入金されたとき
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 10,000円 | 未収金 | 10,000円 |
未収金があると融資が受けられなくなることも
売掛金と未収金はどちらも「これから貰う予定のお金」にあたるため資産として扱われます。しかし未収金は資産でありながらも、増えすぎると融資を申し込む金融機関に対して悪い印象をもたれてしまうこともあるため注意してください。


しかし未収金はそもそも、メインの事業とは関係のないお金だ。さらに回収できていないという点から、少なくても会社の評価がプラスになる要因がないのだ。






売掛金と未収金の違いをよく分からないまま帳簿をつけていると、必要以上に未収金計上が増えてしまう原因になります。未収金が多いと決算書の評価が下がり、銀行から融資を受けようとしても借りられないことがあります。
決算書評価を上げるためにできること
決算書の評価次第では、銀行からお金を借りられなくなったり、借りられる金額が少なくなってしまいます。お金が必要なのに借りられないことほど困ることはありません。そのため日頃から決算書の評価を上げるよう心がけておく必要があります。
決算書の評価を上げるためには、未収金をとにかく少なくすることが第一です。とはいえ本当は未収金なのに故意に売掛金として入力することは不正経理になるので絶対にしてはいけません。


買掛金を必要以上に多く計上しないように注意
買掛金とは「後で支払う必要があるお金」のことです。売掛金と逆の意味となります。買掛金も売掛金と同じように事業に関係するものでしか計上できません。





買掛金は商品だけ受け取って支払いをしていない状態なので、負債(借金)として扱われます。借金があることで、決算書の評価は下がってしまいます。そのためまずは負債を増やしたくないところです。
また買掛金が多いと、利回りの悪い営業をしていると見なされてしまう可能性があります。そのため決算書の評価を上げるには、買掛金をできるだけ少なく計上したいところです。
とはいっても偽装はいけません。必要以上に多く計上しないようにするということです。必要以上に買掛金を多く計上してしまう原因として考えられるのは、未払金と買掛金を混同し、間違えて計上してしまうことが原因の1つとして考えられます。

売掛金が月の売上を上回ると決算書の評価が低くなる
未収金や買掛金が決算書の評価を下げてしまう可能性がある話をしてきましたが、時として売掛金も時に決算書の評価を下げてしまう可能性があります。
売掛金が多いこと自体は売上の多さを示すので問題はありません。しかし月の売上金額よりも売掛金が多いと決算書の評価を下げる可能性があります。
このように思われてしまう可能性があり、結果として決算書の評価が下がってしまうのです。
不良債権とは「回収できない売掛金」です。回収できなければいくら売掛金があったとしても全く意味がありません。
売掛金と未収金の違いを理解して財務状況を改善しよう
売掛金と未収金の違いを理解していないと、銀行融資を受ける際に必要な決算書評価を下げる原因になってしまいます。ややこしいから経理に任せているとはいっても、経営者自身の目でしっかりと帳簿を確認することも重要な仕事です。


間違った計上や決算書評価を上げるための対策を実行するのは営業や経理の社員ではなく、社長であるあなた自身なのです。