クレジット売掛金問題で資金繰りの悪化を招く可能性があります。
消費税が10%に上がったことをきっかけに、キャッシュレス決済の導入が加速しました。企業の小売店はもちろん、最近では個人事業主が運営する小売店でも、キャッシュレス導入が一般的になりました。
ところがキャッシュレス導入が原因で、多くの事業者が資金繰りの悪化を起こす可能性があるのです。
なぜならクレジットカードで支払われた代金はすぐに手元には入金されません。2ヶ月後や3ヶ月後にまとめて振り込まれることになります。
つまり現金を手にするまでに時間がかかるということです。これは売掛金を回収する期間である売掛金回転期間が長くなるということであり、資金繰り悪化につながってしまう可能性があるのです。
どれだけ売掛金があったとしても、入ってくるまでの時間が長くなればなるほど、資金繰りは厳しくなっていくものです。
このことから、代金が後日入金されるクレジット決済は、利用者からすると便利なシステムではあるのですが、代金を受け取る側からすると死活問題になってします可能性があるのです。
目次
クレジット売掛金が引き起こす問題とは
クレジットカードの売上は売掛金として計上されます。
取引先はクレジットカード会社であるため、回収不能になることはまずありません。この辺りは安心してよいでしょう。
しかしクレジットカードで支払いをするお客様からしてみるとキャッシュレスシステムは便利なものですが、代金を受け取る側の店舗としてみるとキャッシュレスを導入することが原因で、資金繰りの悪化や倒産に繋がってしまうケースがあるのです。
キャッシュレスシステムを導入することにより、クレジットカードの利用者が増え売上げがアップするのは喜ばしいことです。クレジットカード払いができるということで店舗を利用してくれるお客様を獲得することができるためです。ところが代金が売上げとして入金されるまで、1ヶ月もしくは2ヶ月以上の時間がかかることになります。

お客様からしてみると支払いの選択肢が広がるのは便利だが、代金を受け取る店舗側からするとすぐに代金が入ってこないという支障を来すことになる。
またクレジット手数料が引かれるのもデメリットとなる。
そもそもクレジット売上げは締日と入金日が異なります。締日が毎月25日、入金は翌月または翌々月の25日というように、取引が完了してから代金が手に入るまでの時間が長くなるのです。キャッシュレス導入前は現金払いしか対応していなかった場合、資金サイクルを見直さないと資金不足に陥ったりすることもあるのです。
なので、これからキャッシュレス決済を導入しようと考えているのであれば、事前の準備をしっかりしておかないと、資金繰りが悪化してしまう可能性があるのです。
キャッシュレス化で起こる問題として、主に次の2つが挙げられます。
- クレジット売上金の入金日のズレによる資金繰りの悪化
- チャンスロスが発生することによる販売不振
クレジット売上金の入金日のズレによる資金繰りの悪化
クレジット売上金の入金日のズレとは、キャッシュレス決済を導入しておらず、導入前に十分な準備をしていなかったことで起こる問題です。
この場合の十分な準備とは、キャッシュレス決済にともなう運転資金の確保を指します。
クレジットの売上金はクレジットカード会社によっても異なりますが、売上が発生してから事業者に振り込まれるまでに最大で2ヶ月~3ヶ月がかかります。つまりクレジット売上が発生しても、運転資金としてそのお金が使えるのは2ヶ月~3ヶ月後になるのです。
入金があるまでは自社で確保している運転資金を使って仕入などをしなければなりません。しかし運転資金を、現金売上からの確保に依存していた場合、キャッシュレスになることで資金の確保が難しくなります。売れば売るほど資金繰りが悪化してしまうのです。



仮に100万円利率5%のビジネスローンを利用したとしよう。利率分の利益が目減りすることになるわけだ。だからといって、商品の値段を5%上げるというわけにはなかなかいかない。
このようなことがあるため、融資を利用するのであれば、長期的な返済計画と事業計画を見直すことが大事になるのだ。
チャンスロスが発生することによる販売不振
クレジット売上の入金日が遅れることにより、仕入れをしたいタイミングで思うような量を仕入れられなくなるケースです。
流行している商品の仕入れなど、確実に利益につながる商品があったとしても、資金不足で仕入れをすることができず売上アップのチャンスをつぶしてしまうのです。
これは小売業に限った話ではありません。サービス業なども人件費などが支払えずに退職者を出してしまい、サービスの質が低下して将来的な販売不振に陥る可能性もあります。
単純に「売上を逃した」ということにはならないのです。小売業においてチャンスロスを起こすことは、顧客からの信頼が下がる要因になります。売上アップのために導入したキャッシュレス決済、クレジット決済が結果的に事業者を苦しめてしまう可能性も出てくるのです。
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クレジットカード決済を導入する前に知っておくべきこと

クレジット売掛金問題を起こしやすいのは、資金力の低い事業者がほとんどです。
とくに運転資金がなければ営業に差し支える業種、たとえば小売業などはキャッシュレス導入で資金繰りの悪化が起こりやすい業種です。
クレジットカード決済を導入する前には、導入することによるメリットやデメリットを理解してなくてはなりません。
クレジットカード決済導入の4つのメリット
クレジットカード決済を導入することで得られるメリットには、次のようなことが挙げられます。
レジ作業の効率化
今まで現金のみのやりとりだったレジ作業が、クレジットカード決済を導入することで作業量が減ります。
レジの中に大量の小銭なども入れておかなくても良くなり、釣銭の渡し違いや強盗被害などの損失額も減らせます。クレジットカード決済を導入で作業量そのものも減るためレジの回転率も上がり、生産性の向上も可能です。


売上などの管理がしやすくなる
現金管理の場合は、売上の管理などはすべて手入力です。
クレジットカード決済を導入すれば、売上はすべてデータ管理が可能になります。売上以外にもデータの活用も可能です。
購入してもらった年齢層などをデータ化しておけば、自社のどういった商品をどの年齢層に訴求すれば売上が上がるかといったことなども推測しやすくなります。
最近では年度末の確定申告もインターネット経由でできるようになりました。インターネットで行なった確定申告はデータ管理されています。いままでは書類や帳簿など、紙ベースで売上げや税金などを管理してきました。
今後はインターネットでのデータ管理が当たり前になってくる可能性が高いです。キャッシュレス決済は、データ管理を円滑に進めるためにも欠かせない決済手段なのです。
集客効果
キャッシュレス決済の導入で集客効果も見込めます。
まず現金をなるべく利用したくないと考える人は意外と多くいます。たとえば会社の経営者の場合。会社専用のクレジットカードを持っていることが多く、交際費はそのクレジットカードから利用することがあります。
もし個人の財布から現金で支払うと、会社の経費の建て替えをするということになります。つまりは、会社の口座から経費分を引き出す手間がかかるのです。それであれば法人カードで決済ができた方が手っ取り早いし、自分の財布の中身を減らさなくても良くなるのです。
またキャッシュレス決済はクレジットカードやデビットカードに依存しています。それらのカードには「ポイント」などの特典がついていおり、ポイントを貯めたいユーザーの集客にもつながるのです。
最近では若い人を中心に現金をもたない人も増えています。スマホなど手軽にインターネットに接続できるようになってから、キャッシュレス決済OKなところをすぐに調べられる環境になっています。
QR決済など、財布が必要ない時代はすぐそこまできているのです。
新規顧客の開拓効果
キャッシュレス決済を導入することで、新規顧客の開拓効果も見込めます。
とくにキャッシュレス決済が日常化している若年層や海外からの観光客には効果が高く、自社商品などのヘビーユーザー以上の顧客になってくれる可能性もあるのです。
外国人観光客の多くは買い物前に「カードOK?」と聞きます。これは日本以外の国でキャッシュレス決済が当たり前になっているからです。日本は長い間、現金第一主義でした。キャッシュレス文化が浸透するにつれ、キャッシュレス決済の導入は売上げアップのためにも必要な「投資」です。
外国人観光客に限らず、若者など新しい客層の開拓にも一役買ってくれます。
クレジットカード決済導入の3つのデメリット
クレジット売掛金問題につながりやすいのが、キャッシュレス決済導入時のデメリットです。
デメリットには次のようなことが挙げられます。
どのようなデメリットなのかチェックしていきます。
システムトラブルのリスクがある
キャッシュレスは専用の端末が必要となります。店舗側で管理運用していく中で、端末のトラブルなどにより利用できなくなってしまうリスクがあります。
もしお客がキャッシュレスしか支払い手段を持っていない場合、商品を販売できなくなるため、売上を逃してしまう可能性があるのです。
店舗で解決できるレベルのトラブルであればよいのですが、そうではない場合には業者に端末修理のお願いをすることとなり、その間はチャンスロスとなってしまいます。
また従業員へ端末操作のトレーニングを行うことが必要となってきますし、何よりも事業者自身がある程度の操作を覚えておかなければなりません。
導入コストと運用コストがかかる
消費税の増税があった令和元年10月以降、キャッシュレスシステムを導入する小売店が激増しました。行政による専用端末導入費用の補助などがあったことも激増の要因です。
ただし行政の導入費用補助には期限があります。
補助が受けられない場合は、実費で導入コストを支払わなくてはなりません。また運用するためのコストも発生します。運用コストとは、キャッシュレス決済時に代金の数%を手数料として決済会社へ支払うお金のことです。
本来手に入るはずの代金が満額受け取れなくなるという点は大きなデメリットでしょう。
売上金の入金日が決済会社ごとに異なる
決済会社とは、VisaやMasterカード、JCBといったクレジットカードブランドのことをいいます。クレジットカード会社でもある一方、電子決済システムを運用する会社でもあるのが、Visaなどの会社なのです。
決済会社から各事業者に支払われる日付は契約方法でそれぞれ異なります。
決済会社と直接契約している場合は、決済会社の支払日になります。もう1つの契約方法は「決済代行会社」です。VisaやJCBなどをひとまとめにして、契約した日程で入金されるのが特徴です。
契約方法はそれぞれで異なります。基本的には決済代行会社を利用するケースがほとんどです。決済会社と個別に契約する場合は、入金日がずれることを頭に入れておきましょう。


キャッシュレス決済を導入する前に、導入したらどのようなメリットとデメリットが発生するのかを考えた方がよいだろう。そしてメリットの方が大きくなると思ったのであれば、導入を検討してみてもよいだろう。
クレジット売掛金問題を解消できる売掛金を活用した2つの資金調達方法

クレジット売掛金問題を解消するためには、売掛金を活用した資金調達方法をおススメします。
金融機関による事業性融資やビジネスローンなども資金を調達するという意味では、便利な方法です。しかし将来的な借金になってしまい、返済ができなくなって倒産につながってしまうケースもあります。
ここで提案したいのが、2つの売掛金を活用した資金調達方法です。
それぞれの特徴を覚えておきましょう。
売掛債権担保融資で資金を調達する
売掛債権担保融資とは、売掛金を担保にしてお金を融資してもらう金融サービスです。
ビジネスローンと違うのは、固定資産などがなくても売掛金さえあれば融資を受けられるという点です。
ただし、担保にした売掛金が不渡りになった場合、融資された運転資金の返却を求められるというデメリットもあります。
参照 売掛債権担保融資
売掛金を売却して資金を調達する
売掛金を専門業者に売却して資金を調達する方法が「ファクタリング」です。
売掛債権担保融資と違い、返済が必要ありません。また資金を調達するスピードが早いこともメリットです。最短で申し込んだ当日に運転資金を手に入れられます。
手数料が発生する点はデメリットです。融資には利息が発生し、ファクタリングでは買取手数料が発生するのです。手数料は売掛金総額の5%~30%の中でファクタリング会社が自由に設定できます。
手数料に関しては法律的な上限がありません。融資商品であれば、貸金業法が適用されます。ファクタリングは融資ではないため、法律が適用されないのです。悪質なファクタリング会社の場合、30%を超える高額な手数料を請求される場合もあります。それでも手数料上限の法律がないため、違法とはならないのです。
参照 ファクタリング
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クレジット売掛金問題の早期対処が事業の成長につながる

キャッシュレス決済を導入するということは、お客からしてみれば決済手段が増えとても便利です。その結果、売り上げがアップする可能性を十分に秘めています。
便利ではある反面、導入する店舗側からすると、手間が増えますしトラブルが増えてしまう可能性があります。
クレジット売掛金が事業者に起こすトラブルは早期対処が重要です。対処が遅くなればなるほど、資金繰りが悪化してしまい、取返しがつかなくなってしまいます。導入コストがキャンペーンで安くなっているからと安易に導入をするのはおすすめできません。
運用コストやメリット、デメリットも考慮した上で導入を決めることが重要になります。事前準備と対処方法をきちんと行なうことで、クレジット売掛金問題を防止できるのです。