売掛金の回収が遅延する問題は事業を行なっていると起こりえることではあるのですが、起こってはならない問題でもあります。
売掛金額の大小に関わらず、場合によっては運転資金がショートしてしまう可能性があり、会社経営が難しくなってしまうことがあります。
もし売掛金の回収が遅延しまった場合には、以下のような対処方法が考えられます。
- 支払いの意思を確認する
- 内容証明を送る
- 支払督促を行なう
売掛金回収の遅れは、自分の会社の資金繰り悪化に直結してしまうため、何としてでも回収するべきです。
ここでは、売掛金の回収が遅れてしまう問題の解決方法と、回収が遅れないようにする予防策についてお話ししていきたいと思います。
目次
売掛金の回収が遅延する原因と対処方法

売掛金の回収遅延の原因として考えられるのは2つです。1つは「取引先の問題」。もう1つは「自分の会社もしくは自分(経営者)の問題」である可能性が高いでしょう。
いずれにせよ、回収ができない売掛金はさまざまな方法で回収を試みることはできます。


それでも支払ってくれないのであれば、場合によっては法的手段を取るという方法もある。たとえば内容証明や支払督促だな。
弁護士や司法書士に回収を依頼するという方法もあるし、債権回収代行会社にお願いする方法もある。
さらに裁判という方法もある。つまりいろいろ解決策はあるということだ。
このように、代理人に回収をお願いすることもできますし、法的手段で回収を試みることもできます。
まず大切なこととしては、どのようなことが原因となって売掛金が回収できなくなっているのかを把握する必要があるでしょう。
取引先が原因で売掛金が回収できない場合
取引先の問題で売掛金が回収できなくなってしまう原因として、次の3つが考えられます。
- 支払いをするお金がない
- 支払う気がない
- 支払いを忘れている
どの理由としても考えられないような理由ではありますが、実際にこのようなことが原因となるケースが多いとされています。
支払いをするお金がない
取引先に支払いをするお金がないことがあります。
つまり買掛金を支払う能力がない状態ということであり、それは「経営状況が悪化している可能性が高い」とも考えられます。この辺りのことをしっかりと把握しておかないと、取引先が倒産してしまい、売掛金の回収ができなくなってしまうこともあるのです。




ただそれ以前に、売掛金が回収不能にならないような対策を取る必要がある。たとえば、全額、もしくは半額を、初めの段階で受け取るという方法もリスク分散となる。
もしも取引先が倒産してしまった場合、そして債権者が複数存在する場合には、早めに売掛金の回収をしなければなりません。他の債権者にお金を持っていかれてしまうためです。
支払う気がない
あまり考えたくはないことですが、支払う気がないケースも起こり得ることなのです。
たとえば取引先が発注者から仕事を請け負っている元請企業であり、こちら側が下請け企業である場合には起こりえます。
このような場合には、下請法によって指導の対象になるため、対処方法としては毅然とした態度で法的措置を取ってください。
参照 下請法(公正取引委員会)
支払いを忘れている
取引先が単純に支払いを忘れているケースもあります。
そのような時は、何かの話のついでにでも「そういえば例の支払いの件、お願いします。」といった感じで軽く伝えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
単純に忘れている場合には、その一言で問題が解決するケースもあります。
こちら側が原因で売掛金の回収が遅れてしまっている場合
ここまでは取引先が原因となっている話をしてきましたが、こちら側の原因で売掛金の回収が遅れてしまう可能性もあります。
主な原因として次の3つが挙げられます。
- 回収方法を決めていない(契約書がない)
- 請求書を出していない・回収方法を知らない
- 相手に嫌な顔をされたくない
回収方法を決めていない(契約書がない)
欧米では考えられない話かもしれませんが、日本の場合、契約書が無くても口約束で売買契約が成立する特殊性を持っています。
企業同士の取引においても、口約束や慣例による契約がされることも。ある意味、売掛金の回収遅延を起こしやすい土壌ができあがっているのかもしれません。
海外、とくに欧米では、売掛金の回収遅延が起こった場合には、すぐに裁判所からの支払命令が下るようになっていると聞きます。
契約書を作るほどの仕事ではないケースも時にはあることでしょう。しかし万が一トラブルになった際に証拠となってくれるのは契約書です。簡単なものでも用意しておくことに越したことはないでしょう。
請求書を出していない・回収方法を知らない
一般的には、商品やサービスを取引先に収め、請求書を出すことによって売掛金が支払われます。これはいわば当たり前のことです。
しかし商品やサービスを納品したから当然売掛金が支払われるだろうと考え、請求書を送っていないケースもあります。
世の中には、請求書が来なければ支払わないという会社は普通にあります。悪意があるとかそういったことではなく、支払いをするためには請求書があることが前提と考えているわけです。
なので、売掛金が回収できない、売掛金の入金が遅れているという前に、そもそも請求書を出しているのか、そして確実に届いているのかを確認しましょう。
もし取引先に請求書が届いており、それでも回収が遅れているということであれば、大きく分けて2つの対応策があります。
- 自分が回収業務を行なう
- 第三者に回収してもらう
自分で回収業務を行なうのであれば、まずは「内容証明」を送ってみるとよいでしょう。「支払督促」という手もあります。これらの行為は一般的なことです。
第三者に回収をしてもらう場合は、弁護士や司法書士といった士業に回収代行を依頼してください。法務省から認定を受けている「サービサー」を活用してもよいでしょう。依頼の際に手数料が発生するため、回収したい売掛金の代金とのバランスを踏まえて検討してください。
相手に嫌な顔をされなくない
売掛金の回収遅延が起こった場合、まずできるのは取引先に支払いの意思があるかを確認することです。
メールや電話で、支払いの確認が取れていないことを伝え、相手の反応を待ちます。単なる支払忘れや、こちら側の請求書が届いていない、取引先に支払う資金が不足しているといったさまざまなケースが考えられます。
しかし取引先への意思確認をせずに、回収不能と自己判断してしまうケースがあるのです。
「取引先の担当者から嫌な顔をされたり、将来的な取引を縮小されたりしたらどうしよう」
代金の支払いを催促するのは、どれだけ信頼関係がある企業同士でも言いづらいかもしれません。本当はおかしなことなのですが・・・。しかし支払いは信頼の証でもあります。支払ってもらえないことで自分の会社の可愛い社員達が路頭に迷うことになってもいいのでしょうか。
経営者であるあなたには、自社の社員たちを守る「義務」があるのです。それに間違ったことをしているわけではありません。商品やサービスを提供したのですから、その代金をもらうのは当然のことです。

会社のこと、従業員のことを考えるのであれば、何が何でも売掛金は回収するべきなのだ。
会社を経営しているということは、ビジネスを行なっているということです。慈善事業やボランティアをしているわけではありません。売掛金が入ってこなければ会社は潰れてしまうのです。
相手の顔色を伺うのもある程度は必要なことではありますが、それによって催促ができないというのは間違ったことです。
経営者の判断1つで、会社の存続、従業員、家族、従業員の家族など、周りに大きく影響を受ける人たちがいることを忘れないでください。
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売掛金回収遅延を心配しない方法
売掛金回収遅延を心配するのであれば、その原因となりそうなところを解消していくといった手もあります。
といった方法が挙げられます。
売掛金回収遅延についての対策条項を明記
これから契約を結ぶ際には、必ず契約書に売掛金回収遅延の対策条項が明記することをおススメします。
つまり「売掛金の支払いが遅れてしまったら〇〇ですよ」という内容を契約書に記載しておくのです。契約書ですので、基本的には契約書作成者の都合の良いように制作してよいのです。何か問題があれば、相手方から指摘が入ります。

たとえば、遅延が起こった際に納品した商品の所有権が売元に移される「所有権留保条項」や遅延が1回でもあった場合に、月ごとの売掛金払いを一括して請求できる「期限の利益喪失条項」などが挙げられます。
期限の利益喪失条項とは、支払遅延が1回でも遅れた場合、他の支払期限が来ていない売掛金も一括して請求できる条項です。
- 条文:第●条 甲について次のいずれかの事由が生じたときは、乙はなんらの通知・催告なくして、甲に対して有するすべての債権について甲の期限の利益を喪失させ、代金全額について支払請求ができる。
- 項文:1.甲が乙に対する債務の支払を一部でも怠ったとき。
- 項文:2.甲がほかの債権者に対する債務の支払を怠り、又は約束手形もしくは小切手について不渡事故を起こしたとき。
- 項文:3.破産、民事再生、会社更生等の法的手続又はこれに準ずる手続がなされたとき。
- 項文:4.甲が合併によらないで解散したとき。
- 項文:5.その他甲が本件契約条項に違反したとき。
このような文章を明記しておきましょう。
売掛金をもらう権利を売却してしまう
売掛金の回収について心配するのであれば、事前に売掛金を売却して資金化する方法があります。それがファクタリングです。
ファクタリングとは、売掛金を受け取る権利である売掛債権を、第三者であるファクタリング業者に売却してお金を手に入れる方法です。
中小企業庁や法務省でもファクタリングは推奨されており、手形や小切手に替わる金策として注目されています。
- 取引先を気にする必要がない
- 申し込んでからお金を手にするまでの時間が短い
- 借金ではないため毎月の返済が必要ない
- 決算書評価を上げられる
ファクタリングを利用すると、売掛金がいつ取引先から入ってくるのかという心配をする必要がなくなります。なぜなら、売掛金を受け取る権利である売掛債権をファクタリング会社に売ってしまうためです。
さらに最短で申し込んだ当日に売掛金を現金化することが可能です。業者によっても異なりますが、申し込んでから入金されるまでのスピードは資金調達方法の中ではかなり早いです。借金ではなく売却になるため、毎月返済する必要もありませんし、利息も発生しません。
決算書評価が下がる要因は「負債の多さ」です。回収できていない売掛金は帳簿上黒字だったとしても、売上として入金されていなければキャッシュフローは悪化します。運転資金不足による債務超過が起こりやすくなるのです。
ファクタリングを行なってキャッシュフローを改善させ、債務超過を起こさないようにしておけば、高額な融資を申し込む際の審査で優位になります。
- 手数料が発生するため売掛金代金の100%がお金になるわけではない
- 不良債権は買い取ってくれない
ファクタリングは借金ではないため利息は必要ありません。しかし金券ショップで手数料が発生するのと同じように、ファクタリングにも売却手数料が発生します。売掛金の回収が確実にできるのであれば、無理をしてファクタリングを利用しなくてもよいでしょう。あくまでも緊急でお金が必要な場合などに利用することをオススメします。
参照 ファクタリング
ちなみに不良債権は買い取ってくれません。そのため「取引先からほぼ間違いなく売掛金が入ってこない。」と分かっている状態でファクタリング会社に売掛債権を売却したら、詐欺行為に該当する可能性があります。「取引先から売掛金が入ってくるけど、それまで待てない。すぐに現金が必要だ」ということであれば、問題ありません。
悪質なファクタリング業者に注意
取引先と合意の上で行なうファクタリングでWIN WINにしたはずなのに、債権を買い取ったファクタリング会社から高額な手数料を請求されたり、本来発生しないはずの利息を取ろうとしたりする業者もいます。
ファクタリングは中小企業庁も推奨する金融サービスではありますが、肝心の法整備が不十分な側面を持っています。手数料の上限値は貸金業法のように決められていないのです。ファクタリング業界内の相場の中で自由に設定されています。
ファクタリング手数料の相場は2社間取引と3社間取引で異なります。
- 2社間取引・・・10%~30%
- 3社間取引・・・5%~10%
相場といってもあくまで目安であるため、守らなければ法律違反というわけでもないのです。
ファクタリングは「売掛金の売却」が原則です。借金ではないため、利息は発生しません。ところが以下のような分割返済を促される発言をされたら、その業者には注意が必要です。
「社長、そのお金送金したら厳しいのではありませんか?分割返済してもよいですよ。利息が発生しますけど」
これはファクタリングの原則を無視した取引となります。その他にも、取引先からの送金が遅れていることに対して延滞利息が発生していると言われることもあります。
しかしこの段階では、すでに悪い業者と契約をしてしまっている状態です。解決する方法としては、弁護士に依頼をすることで問題が解決できる可能性が十分にあります。
そもそもですが、契約する前に悪徳業者を見分ける必要があります。一番シンプルな方法としては、知名度の高い、多くの事業者が利用しているファクタリング会社を利用することが、比較的安全とされています。
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売掛金の回収遅延対策はまず行動を起こすことが大事

売掛金の回収遅延についての対策は、まず行動を起こすことがなによりも大事です。
ただ悩んでいても売掛金は回収できません。自発的に行動し、時には法的措置などを必要な行動をとるべきでしょう。回収に必要な知識や情報は頭に入れておくとともに、経営者としての毅然とした態度が重要となるのです。
回収遅延防止策を取ることも重要です。契約書やファクタリングなど、遅延が起こった後にスムーズに回収できるような準備を行なってください。


そしてなによりも積極的に行動しなければならない。待っていて解決するほど世の中は甘くはない。


もちろん専門家である弁護士や司法書士、代行業者にお願いしたほうが、自分で回収作業を行なうよりも回収できる可能性は高くなるだろう。ただし第三者にお願いするわけだから当然コストはかかってくる。

ファクタリングはどうでしょうか?


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